行動ファイナンスに学ぶ⑨

「慣れ」とは。よく知っているものほど勝ちやすい？

ここにコインが二種類あるとしよう。一つはお馴染みの100円玉。もう一つはアメリカの25セント硬貨である。この二つのどちらかを使ってコイントスゲーム（投げたコインが裏か表か当てるゲーム）をするとした場合、あなたはどちらのコインを選ぶだろうか？

この質問に対して多くの日本人は100円玉を選び、また多くの米国人は25セント硬貨を選ぶという結果になった。確率的には同じであっても人間は「より知っている物」を選ぶ傾向があるのだ。

また、人間は普段親しんでいるものほど高く評価する傾向もある。自分の乗っている車のメーカーは他のメーカーよりも優れた自動車を開発すると信じているし、自分の使っているスマートフォンメーカーは他のメーカーよりも優れた機種を発売すると信じている。

人は、好きなメーカーの商品を買うのではなく、買った商品のメーカーを好きになるのだ。これは一般的な生活の場においては何の問題にもならないが、投資の世界においては極めて重大な損失を引き起こす元凶になり得る。

慣れとトレード

多くの国内バイナリーオプショントレーダーは「米ドル円」や「ユーロ円」を取引する。あるいは「豪ドル円や」「ポンド円」などがとても人気だ。だが、世界的な流通量でいえば「ユーロ米ドル」が圧倒的に多い。もしくは「ポンド米ドル」や「ユーロポンド」などがメジャーだと言えるだろう。何故日本人は円絡みの通貨を好んで取引するのだろうか。

たしかに「日本に住んでいる以上、日本の経済状況・金融情報には詳しい。だから円絡みの通貨ペアを取引するほうが有利なはずだ」という意見もあながち間違いではないだろう。だが、本当に「詳しいこと」とトレーディングの成績自体にプラスの相関は明確に見出せるのだろうか。

前回の行動ファイナンスに学ぶ⑧で勉強した内容を思い出して欲しい。我々は自分の望む特定の情報、つまり「代表性」に執着しすぎれば逆に本質を見誤ってしまうことを既に知っている。慣れや親しみの問題も全く同様で人間は自分の知識と対象物の両方を過大評価してしまいがちだ。

自分の得意分野はトレードの結果成績から冷静に判断するようにしよう。「得意なはず」ではダメなのだ。円絡みの通貨ペアで結果が出ないのならその他の通貨ペアにも視野を広げてみよう。一旦自分の執着をまっさらにして全てをニュートラルな気持ちで眺めてみよう。必ず新たな気付きが生まれるはずである。