行動ファイナンスに学ぶ②

自信過剰の恐怖

　ある有名な調査（アンケート）がある。

　「あなたは優秀なドライバーですか？街で見かけるたくさんのドライバー達と比べ、自分はそれ以上か？それとも同等か？或いはそれ以下？答えて下さい。」

　あなた自身はこの質問に対してなんと答えるだろうか。もし、人間が自分を客観的に、しかも正しく理解しているとしたらこの質問に対する答えは

・平均以上　33％
・平均同等　33％
・平均以下　33％

　と、なるだろう。しかし現実にはどうか。かつてこれと同じ質問を大学生に対して行った調査結果がある。それによるとなんと80％以上もの学生が「平均以上」と答えたのだ。
　学生達が明らかに自分自身と他人との比較において間違いを犯している。

　では、翻ってトレーダーはどうだろうか。経済の見通しや相場の予測において他人よりも劣ると考えている人はそもそもトレーダーにはならないだろう。と、するとトレーダーの持つ自信過剰な意識は彼のアンケートに答えた大学生達よりもずっと酷い可能性すらある。

　トレードにおける最大のポイントは、リスクとリターンを正しく測るということだ。リターンに比べてリスクが高すぎるのであればそのトレードは行うべきでないし、逆ならば相応のポジションサイズで取引を行う「必要」がある。
　しかし、過剰な自信はトレーダーの目を曇らせるのだ。本来得られぬはずのリターンに恋をし、乙女のようにリスクに対しては盲目的になる。その先に何が待っているかは明白だろう。

我々は知らない、知ることはないだろう

　上記見出しの言葉は19世紀に活躍した生理学者、エミール・デュ・ボア＝レーモンの言葉である。彼は広い意味での科学上の問題において、永遠に人間が知りえない部分が存在するはずだとし、人間が人間である以上、認識上の問題点全ての解決を見る日は永遠に訪れないとしてこの言葉を用いた。

　不知の知という言葉がある。また、分を知るという言葉もある。人間は驚くほど楽観的で自分に対して自信を持っている物だ。特にトレーダーはまるで自分が神にでもなったかのような気持ちになり、相場の動き全てを予知できるかのような態度に出ることすらある。

　しかし事実は違う。それは歴史が証明している。
　謙虚であること。それはトレーダーに求められる最低限の要素であるとともに最も難しい条件だ。
　短期的に謙虚であったり弱気になることは誰でもある、しかし、常に相場に対して素直に寄り添う姿勢を保つことはおそらくあなたが頭で考えているほど容易くは無い。

　過剰な自信は過剰な取引に繋がり、大幅なパフォーマンス悪化の原因になる。相場は常に正しい。損失が出るのは全て自分自身に原因がある。それを理解することが、勝ち組トレーダーへの第一歩なのだ。