行動ファイナンスに学ぶ③

人間は後悔を恐れる

　前回は、いかに人間が自信過剰であるか、そして自信過剰であるとトレードを行うにあたってどんなマイナス面があるかを述べた。

　今回は、更に進んで人間がいかに後悔を恐れるかを学んでみよう。これは前回の内容とも非常に強い結びつきがある。自信過剰の背景には後悔を恐れる思考や行動があり、逆に後悔を恐れるその理由は、自信に満ち溢れていたいという心理の表れでもあるのだ。つまり、自信過剰と後悔を恐れる心は表裏一体のものであり、相乗効果によってそれぞれが人間の内部で肥大化しやすいものであることを示している。

損小利大

　損失は小さく、利益は大きく。相場に関する格言として多くの人が耳に、目にしたことがあるだろう。だがほとんどのトレーダーはこの言葉を実現できてはいない。
　損を小さくするためには素早い損切りが必要になる。また、利益を大きくするためには簡単には利食いせず、ある程度引っ張る必要がある。

　損を切るのは難しい。買って値段の下がった物が自分が決済した直後に値を上げ始めたらどう感じるだろう。とても後悔してしまう。それに、このまま持っていたら買値まで戻るかもしれないじゃないか！

　利益の出ている物をそのまま持ち続けるのも難しい。買って値上がりした物をそのまま持ち続けていてそのうち値段が下がってきたらどう感じるだろう。とても後悔してしまう。それに、決済した途端値が下がり始めてまた安く買えるかもしれないじゃないか！

守るべきはプライドか、お金か

　人間は後悔することをとても恐れる。自分が間違った行動をとってしまったことを認めざるを得ない状況になるのを意識・無意識に関わらず避けようとするのだ。
　トレードにおいて間違った取引を認めるということは即ち損失の実現化である。

　含み損を抱え、含み益をさっさと実現してしまう。言い換えればパフォーマンスの悪い物を抱え、パフォーマンスの良い物を捨ててしまう行為だ。

　あなたはトレードに何を求めているだろうか。「そんなのお金を儲けることに決まっているだろう！」って？どうだろうか。多くの人々にとってそれは甚だ怪しい。

　多くの人々が実際に行っているトレードを見てみると、彼らにとって守るべきものはお金ではなく自分のプライドのように見える。損失を確定させることを恐れるあまり、含み損がドンドン大きくなり、逆に含み益になった物は小さな利益でどんどん確定させてしまう。当然勝率は上がるだろう。それによって自分のプライドも守られる。勝った数と負けた数を比較してみたら勝った数の方が圧倒的に多いからだ。でもそんな物になんの意味があるだろうか。口座の中には含み損化した商品が山のように膨れ上がっている。

　最後は、含み損を支えきれなくなって一発退場だ。勝率は9割超え。でも金額的には損失。それでいいのだ。多くの人はそれを望んでいる。望んだ結果を手に入れるだけなのだ。

さて、あなたはどうだろうか。